※2024/7/2 参考資料等、一部修正しました
石綿(以下、アスベスト)による健康障害の予防対策として平成17年(2005年)に制定された石綿障害予防規則(※以下、「石綿則」)ですが、解体・改修工事などでの健康障害の防止のため規制の改正が段階的に施行されており、令和5年(2023年)10月に完全施行されました。
これはアスベストの有無にかかわらず、一定条件以上の工事についての事前調査と都道府県への届け出の義務化、資格者による除去工事後のアスベスト等の取り残しがないことの確認の義務化など、制定当初よりかなり強化された改正内容です。
努力義務ではなく罰則も定められています(6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金 ※1)。
また、規制対象についても範囲が拡大されており、これまでは規制の対象外だったアスベスト飛散の危険性の比較的低い「レベル3」の建材(アスベストが素材に練り込まれた成形板など ※2)も規制対象となっています。
上記の改定によって対象建材、報告の必要がある工事いずれの範囲も広がったことから、アスベスト対応掃除機のメインユーザーである解体業のお客様だけでなく、改築・リノベーション・補修工事などを請け負うリフォーム工事業、工務店様からもアスベスト対応についてのお問い合わせを非常に多くいただいております。
今回は、アスベスト対応の掃除機(バキュームクリーナー)の選び方とおすすめの機種をご紹介します。
【目次】
■ 「HEPAフィルター付きなら何でもいい」は間違い!?
■ 石綿則は作業者と施工依頼主の安全を確保するためのもの
■ 石綿則対策に!アスベスト対応掃除機おすすめ2機種
■ 「HEPAフィルター付きなら何でもいい」は間違い!?
今回の改正から石綿則の対象になった業者様も多いため、お問い合わせで一番多いのが「アスベスト対応の掃除機が必要だが、どれを選んでいいのか分からない」というものです。
特定建築材料の除去等の方法(新法第18条の19、新規則第16条の12~14)を見ると
「JIS Z8122に定めるHEPAフィルターを付けた集じん・排気装置を使用する」としか記載されておらず、極端に言えば、「規定のHEPAフィルターがついていれば家庭用の掃除機でも問題ない」とも読み取れてしまいます。(※3)
出典:環境省ホームページhttps://www.env.go.jp/air/air/post_48/20220112leaflet.pdf)
でも、言葉通り本当に家庭用のHEPAフィルター付き掃除機でもいいのでしょうか?
■ 石綿則は作業者と施工依頼主の安全を確保するためのもの
そもそも石綿則が制定されたのは、アスベストによる健康被害を防ぐためです。
アスベストの漏れを極力減らすことが作業者と施工依頼主の安全を確保することに繋がります。
施工依頼主の現場にアスベストを含む粉じんを「残留しない」「撒き散らかさない」のは絶対ですが、「作業者の安全を確保する」という点からも家庭用のHEPAフィルター付き掃除機はとてもお勧めできません。
単にHEPAフィルターが付いているだけの掃除機はHEPAフィルターの面積が小さく詰まりやすいことから、アスベストがわずかでも漏れ出してしまうリスクがあるためです。
では、家庭用ではなく、業務用の掃除機でHEPAフィルター搭載なら何でもいいかというとそういう訳でもありません。
HEPAフィルターの定義は国によって異なり、例えば欧州で採用されているEN規格では、HEPAフィルターは粒子捕集率によってE10、11、12、H13、H14と5つのクラスに分けられています。
一方、日本ではJISZ8122規格をクリアする高性能フィルターのことをHEPAフィルターと呼びます。
さきほどのEN規格に照らし合わせると、日本の規格で「HEPAフィルター」と呼べる、つまりアスベスト回収の基準を満たすのは「H14」クラス相当のHEPAフィルターのみとなってしまいます。
HEPAフィルターを使っている掃除機は機種がかなり限られてきます。
そしてたとえ規格を満たすHEPAフィルターの機種であっても、掃除機本体の接続部分の密閉性が低ければ、回収したアスベストがそこから漏れ出してしまう危険性があるため、掃除機本体の密閉性が保たれていることも重要です。
様々な条件をチェックしていくと、>業務用であっても、アスベストに対応している機種はごく限られているのです。
実際にアスベスト用途の使用を禁止しているメーカーもあります。
■ 石綿則対策に!アスベスト対応掃除機おすすめ2機種
こちらの2機種はメーカーで「アスベスト対応機種」として販売している真空掃除機です。
作業者の安全を最優先するならこの機種!「GM80P HEPA」
ニルフィスク 産業用バキュームクリーナー GM80P HEPA
掃除機のフィルターが詰まると、吸い上げた粉じんの行き場がなくなり、接続部の隙間などから漏れだす恐れがあります。
これを緩和するのがGM80P HEPA独自の「4段フィルトレーション機構」です。
HEPAフィルターを含めるとなんと4つものフィルターが搭載されており、粒子の粗い粉塵から細かい粉塵までを段階的にキャッチしていくので、最後のHEPAフィルターまでたどり着く粉塵は2μm未満の粉塵がわずか0.15%程度。
フィルターの表面積も大きく、HEPAフィルターが目詰まりしにくい構造になっています。
排気のきれいさはもちろん、粉じんが漏れにくい=安全性が高い作りになっていることが特徴です。
また、アスベストなどの危険粉じん用バキュームクリーナーとして、粉じん作業特別教育用のテキストにも掲載されており、解体のプロに選ばれ続けてきた製品でもあります。
繰り返しになりますが、石綿則は石綿の健康被害を防ぐことが目的でできた規定です。
作業者の安全・健康を最優先するならまず一番におすすめできるのがこちらの「GM80P HEPA」です。
「GM80P HEPA」は、単品のほかフリースバッグ25枚付きのセットとペーパーバッグ50枚付きのセットがございます。
安全性はもちろん、狭い場所でも使いやすい!「GD930S2 HEPA」
ニルフィスク 業務用バキュームクリーナー GD930 S2 HEPA
「GM80P HEPA」と同様にアスベスト・RCFなど危険粉じんに対応するドライバキュームクリーナー(真空掃除機)で、0.3ミクロンのダストを99.997%捕集するHEPAフィルターを標準装備しています。
こちらの機種はダストバック・HEPAフィルターの2段階で粉じんを捕集します。フィルターが大きいので目詰まりしにくく、捕集した粉じんが漏れ出しにくい密閉性の高い作りです。
大きなタイヤと前輪キャスターホイール、高さを抑えたコンパクトな設計で、取り回ししやすく、せまい現場でも操作性に優れています。
また、作りはコンパクトでも、ダストバッグは15リットルの大容量なので、ダストパックの交換頻度も下がり、ストレスなく作業できます。
GD930 S2 HEPAはダストバッグ付きもご用意しています。
今回の法改正を受け、メーカーでもアスベスト対応機種の問い合わせや注文が殺到しており、今回ご紹介の2機種「GM80P HEPA」「GD930 S2 HEPA」は品薄状態が続いています。
築年数経過によるリフォームやリノベーションの需要も近年高まっており、既存建物の解体件数は2030年ごろまで今後も増え続けていくと予想されていますので、現在のような品薄の状態はしばらく続くと考えられます。
ヒダカショップでは、「GM80P HEPA」「GD930 S2 HEPA」を在庫しておりますため、在庫分は即納が可能です。(2024年6月現在)
品切れの場合も予約注文として承りますが、納品までにお時間いただく場合もございますので、ご希望の場合は、お早めにご検討ください。
参考資料
※1:厚生労働省「石綿障害予防規則の概要(建築物等の解体・改修作業)」
https://www.mhlw.go.jp/content/000910134.pdf
※2:国土交通省ウェブサイト「アスベストの飛散性・非飛散性とレベル1~3の整理」
https://www.mlit.go.jp/road/ir/ir-council/asbestos/2pdf/s1-1.pdf
※3:環境省ウェブサイト「大気汚染防止法が改正されました」
https://www.env.go.jp/air/air/post_48/20220112leaflet.pdf
[特定建築材料の除去等の方法](新法第18条の19、新規則第16条の12~14)